まだ11月だというのに豪雪の駅。人気は無い。風は強い。音は雪に消える。信号は赤だ。秋田杉に湿った雪が重い。重さに耐えかねて枝がはらりと身震いする。その音が微かに響く。その音を聞くのは森に潜む者だけか。

静寂が戻る。再び無数の雪の結晶が宙を舞い、音もなく秋田杉に休む。また枝が身震いする。無限に繰り返す雪と秋田杉の舞台。誰もいない。今はいない。信号は赤だ。赤信号は峠の門番。峠に来るなと言っている。その先の鉄路は折れ曲がり、先は見通せない。急な登りだ。

あれ？　ホームの雪は掻かれている。そうだ、人だ。この駅を守る人がいる。人気の無い駅を守る人がいる。なぜ？　守らず、雪と秋田杉に任せればいいのに。

きっと、その人は待っているのだ。信号も青になる時を待っている。青になれば列車に乗る人がいる。そして降りる人もいる。降りる人、この雪を見るかな。列車を待つ駅−。