福　　島

私の奥羽線への旅は深夜の福島駅から始まる。 早朝に撮影地入りするために仙台駅から上り最終列車に乗り込み、福島で約３時間の待ち時間の後、季節列車「おが２号」で雪の中に静かに息づく奥羽路を目指す。仙台から奥羽線へ入る道は幾通りもあるが、この「おが２号」を利用して福島回りで出掛けたことが印象深い。 深夜の福島駅は、厳しい寒さの中で逞しく走り続ける深夜のランナー達の十字路。凛とした透明な空気の中で、青い寝台列車の先頭に立つ赤い機関車には言葉には言い表せない逞しさがある。 最終列車が去った後、福島駅のホームの待合室には私と同じように奥羽本線の夜行列車を待つ人たちが数人、ストーブの周りに寄り添うようにして暖を取っている。が、私はホームに立ち、寒さで指先の感覚がなくなりそうなのも忘れて夢中でシャッターを切る。「ゆうづる」「あけぼの」「津軽」「おが」・・・次々に列車はやってくる。次第に睡魔に襲われるが仮眠する気にはなれない。 息づく機関車とは対照的に、寝台車は静寂の世界。深い眠りが辺りを包む。白く曇った窓ガラスの向こうに、寝付けない幼な子をあやす若い婦人の姿が見えた。最後尾ではナハネフ22やスハフ43が妻面を雪で真っ白にしている。こちらには人気は感じられない。終夜営業の弁当売りも手持ち無沙汰だ。 「ごくろうさんだねえ」…「どうも、夜中にお邪魔します」。助役さんとの一言の会話で心が内側から暖まる。

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